飛ばない蝶は、花束の中に
「えぇっ?」
「お兄ちゃんは渡せないし、何ひとつ引く気はないけど」
夜は、ちゃんと寝ないと。
今朝のあんた、ひどい顔色だったもの。
「…でも」
「でも、じゃないわよ」
「……」
雅は、いくつもの笑顔を持っているけれど、その中でも、ちょっと素なんじゃないかって思える自然な笑みを、浮かべた。
「…凱司さんに……そっくりですね」
あは、と面白そうに笑う雅は、私と視線を合わせると、じゃあ、鷹野さんに訊いてきます、と立ち上がった。
「訊いて大丈夫なの?お兄ちゃんに言ってからの方が良くない?」
私は、きっと“タカノ”は許さないと思ってそう言ったのだけれど。
「大丈夫」
困ったように笑った雅は、先に訊いてから、凱司さんに報告なんです、と。
ドアを開けた。