飛ばない蝶は、花束の中に
「友典は?」
「はい、今日は雅さんも一樹さんもお休みだと言うことで、教習所に」
「教習所?」
「ええ、普通免許は必要ですから」
淡々と、にこやかに話す宇田川さんを見ているうちに、どんどん蘇る、記憶。
そうだ、この人は。
「何も受験前に…」
「何事も集中力です。凱司さんだってもっと受験に近い頃、通われたじゃないですか」
立派にどちらも取得なさったでしょう?
と、得意気に笑む彼は。
引っ越す頃、一度だけ、見た。
お兄ちゃんが話し掛けた事を無視した、まだ汚い金髪だった“タカノ”を、すごい勢いで殴りつけたのを。
この人ならば、雅から“タカノ”を引き剥がせるかも知れない。
雅がお兄ちゃんとくっつくのは許さないけど。
少なくとも、好きなひとの目の前で、他の男に触れられるつらさからくらいは、解放してやれたら、いいと思う。