飛ばない蝶は、花束の中に


ぴくり、と“タカノ”の睫毛が揺れたのを、見た。

睨みつける私と、私の前に立つ雅とをゆっくり見比べた“タカノ”は、その妖艶な笑みを消した。




「…ごめん、イラッとした」


深くため息を吐いた“タカノ”は、苛立たしげに目を閉じると、くるりと踵を返した。



「俺、部屋にいる。雅ちゃん、凱が帰って来たら教えて」

「…………はい」



気まずい、空気。

雅は指先を唇に当てて、“タカノ”を目で追うと、小さくため息をついた。


“タカノ”の出て行ったドアをいつまでも見つめる雅に。

声を掛けていいのか解らないまま、私は山になった洗濯物に近づいた。




「…あんた、アイロンかけてよ。私、畳むから」


「……うん…。ごめん、ね?鷹野さん…いつもはもっと優しいのだけど…」


わずかに泣きそうな雅に、ほんの少し、罪悪感が。

わいた。



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