飛ばない蝶は、花束の中に


「……あんたさ、カフェでバイトしてるって言ってたよね?」



あまりにしょんぼりと、アイロンをかける雅のそばで、私は片方の靴下を探す。


顔を上げた雅は。

こちらがドキリとするほどに、物憂げな顔をしていて。


何かを言いかけて口を開け、結局なにも言わないまま、肯定の笑みを浮かべた。

その一連の表情がたまらなく色っぽい、と。


数ヶ月あとに産まれただけだろう女の子には、到底抱かないだろうイメージに、私は思わず顔をしかめた。



「近いの?」

「…場所、ですか?」


当たり前じゃない、と。

一対揃った靴下を、くるりと纏めた。



「そ…ですね、電車だから…近くはない…かも」


鷹野さんのお店の、お向かいなんです、と口にした雅の表情は、決して嬉しそうには見えなくて。


私はますます、“タカノ”の、雅に対する執着と束縛に、雅は苦しんでいる、と。


そう、思い込んだ。



< 141 / 328 >

この作品をシェア

pagetop