飛ばない蝶は、花束の中に
「……あんたさ、カフェでバイトしてるって言ってたよね?」
あまりにしょんぼりと、アイロンをかける雅のそばで、私は片方の靴下を探す。
顔を上げた雅は。
こちらがドキリとするほどに、物憂げな顔をしていて。
何かを言いかけて口を開け、結局なにも言わないまま、肯定の笑みを浮かべた。
その一連の表情がたまらなく色っぽい、と。
数ヶ月あとに産まれただけだろう女の子には、到底抱かないだろうイメージに、私は思わず顔をしかめた。
「近いの?」
「…場所、ですか?」
当たり前じゃない、と。
一対揃った靴下を、くるりと纏めた。
「そ…ですね、電車だから…近くはない…かも」
鷹野さんのお店の、お向かいなんです、と口にした雅の表情は、決して嬉しそうには見えなくて。
私はますます、“タカノ”の、雅に対する執着と束縛に、雅は苦しんでいる、と。
そう、思い込んだ。