飛ばない蝶は、花束の中に


そのカフェに行ってみたい、と私は雅に、頼み込んだ。


「暇なんだもの。お兄ちゃんは出掛けちゃうし」


ひとりで出掛けちゃ駄目みたいだけど、ふたりなら大丈夫よ。

私、ちょっと外に出たい。
連れて行ってよ。




「…でも……」

凱司さんなら、夕方には戻りますよ?それから凱司さんに連れて行って貰ったら?と。


アイロンのコンセントを抜いて 、控え目にそう言った雅は、困ったように笑みを浮かべる。



なんとも、腹立たしい笑顔。

この顔さえしておけば、どうにかなると思っているんだと思う。

当たり障りなく、やり過ごすには、最適な表情かも知れないけれど、私は、引かなかった。





まさか。
まさか雅が。

“出して貰えない”んじゃなく、“出られない”だなんて。



知らなかったから。




< 142 / 328 >

この作品をシェア

pagetop