飛ばない蝶は、花束の中に
そのカフェに行ってみたい、と私は雅に、頼み込んだ。
「暇なんだもの。お兄ちゃんは出掛けちゃうし」
ひとりで出掛けちゃ駄目みたいだけど、ふたりなら大丈夫よ。
私、ちょっと外に出たい。
連れて行ってよ。
「…でも……」
凱司さんなら、夕方には戻りますよ?それから凱司さんに連れて行って貰ったら?と。
アイロンのコンセントを抜いて 、控え目にそう言った雅は、困ったように笑みを浮かべる。
なんとも、腹立たしい笑顔。
この顔さえしておけば、どうにかなると思っているんだと思う。
当たり障りなく、やり過ごすには、最適な表情かも知れないけれど、私は、引かなかった。
まさか。
まさか雅が。
“出して貰えない”んじゃなく、“出られない”だなんて。
知らなかったから。