飛ばない蝶は、花束の中に
血の気の戻ってきた雅は、立ち上がると、ちょっとココア頂いてきますね、と視界から消えた。
置かれたままの、雅の四角いポシェットは白いエナメルで、そこから真っ先にテーブルに出した携帯が、小さく鳴り出す。
私は何となく雅の携帯を手に取って。
『鷹野さん』の表示に、どきりとした。
何となく。
何となくなんだけど。
雅を外に出しちゃ、いけなかったんじゃないか、って。
あの、…人とすれ違うとき。
人がそばにいるときの。
息が詰まったかのような緊張の仕方は、やっぱり普通じゃない。
不安が、じわりと。
「…お兄ちゃんに、怒られる…かも?」
口の中でだけ呟いた私は、ちらりと雅の消えた方を見やると、急いで着信を、切った。