飛ばない蝶は、花束の中に
大丈夫ですか?タクシーを頼みますか?
いえ、大丈夫です。
帰り際の、マスターと雅のやり取りを、ひどく不自然なものに感じたけれど、私は、入れ替わるように入って来たカップルに、目を引かれていた。
失礼かも知れないけれど、親子ほども年が離れているように見える。
若い男は慇懃に、不思議な甘やかさを醸し出していて。
ちらりと雅に、目配せするように、挨拶をしたように見えた。
見てはいけないもののように、私の心に引っかかる。
「深雪ちゃん?」
「……」
雅は、紙袋に入れて貰った、蓮のブラマンジュを手に提げて、カフェを降りる三段の階段を下りた所で、私を振り返っていた。
「……知ってる人たち?」
「ああ…あのお店のお客様と、従業員の方ですよ」
「あの店って“タカノ”の?」
にこ、と肯定の笑みを浮かべた雅は、あそこの方はお得意様ですから、と小さく首を傾けた。