飛ばない蝶は、花束の中に
来た道を、ゆっくりと歩きながら、私は雅の顔色が、また優れない事に気が付いた。
人とすれ違うたびに。
人が追い越して行くたびに。
雅の口数が、減る。
私のバッグの中で、携帯電話のバイブレーションを感じて足を止めれば。
街路樹の幹に手を付いて、雅は大きく息を整えた。
心臓でも悪いのかしら、と。
私は雅のそばに立って、顔色の悪さに眉をひそめながら、知らない電話番号に、ドキン、とした。
「…はぃ」
お兄ちゃんから電話がかかって来たことは、ない。
電話番号を、知らされていない。
知っているのは、メールアドレスと、自宅の固定電話だけだ。
だから、知らない番号は。
きっとお兄ちゃんだ、と。
変な予感が、した。