飛ばない蝶は、花束の中に


…うん、大丈夫です
ほんとに
もうきっと、大丈夫
今から帰りますから

大丈夫、怖くない
具合悪くなってないですから




「あたしが、誘ったんです」


雅は青い顔で、嘘を吐く。

雅が誘ったどころか、連れていけと言ったのは私。


具合はもう、充分に悪そうで。



どうして携帯が繋がらないんだとでも訊かれたのだろう。

え?とばかりに自分のバッグを開けて。

切れた電源に、一瞬動きを止めた“雅”は。



ごめんなさい、充電が切れたことに気が付きませんでした、と。

嘘を、重ねた。



私を見ることなく、あっさりと。




「鷹野さんに、電話しておき………ああっ…?」


突如、素っ頓狂な声を上げた雅の視線を追った、いたたまれなさにしょげていた私は。

雅に突っ込むような勢いで止まった、真っ黒なアウディから駆け降りてきた人が。


宇田川さんだと気付くよりも早く、雅をきつく抱き締めたのを、見た。



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