飛ばない蝶は、花束の中に
「…お兄ちゃん」
『………妙な声を上げるな、と雅に言え』
「………………」
明らかにほっとしたようなお兄ちゃんの声は、どれだけ雅を心配したかが窺われた。
謝らなきゃいけないとは思うけど。
私ひとりが、蚊帳の外。
どうしてそんなに心配するの。どうして雅は。
「大丈夫でしたか?よくこんな所にまで来れましたね」
私が一緒だったのに。
宇田川さんは、まるで雅が迷子の三歳児ででもあるかのように。
腕を緩めて、その顔を見下ろした。
「無理は、しないでください」
少しずつで、大丈夫ですから。
どこかに行きたいときは、友典でも、一樹さんでも、凱司さんでも私でも。
誰でも良いから、声をかけて下さい。
一樹さんから、あなたが帰って来ないと電話を頂いたときは、心臓が止まるかと思いました。
深く息をついた彼は雅の肩に手を置いて。
私を。
蚊帳の外にいる私を、複雑な笑顔で、ちらりと。
見た。