飛ばない蝶は、花束の中に


私の手を引いたまま、雅は歩く。
私の切った携帯の電源を入れないまま。



「…ねぇ。“タカノ”に電話するんじゃないの?」


いつまで手を繋いでいるの、と振りほどいてそう訊けば。


え?

と。
雅は、その、長くはないけど濃いめの睫毛をしぱたかせた。



「……だって、あたしの携帯、“充電切れ”ですもの」


にこりと。
そしてチラリと、はるか後方で、まだ私たちを見ている髭の彼に視線をやった雅は。


嘘は、つき通さないとね、なんて。



電源を切ったのは私だと、気が付かなかった訳じゃないんだ?


わずかに愉しげに笑った雅が、ひととすれ違う度に口数が減る気がしていた私は。

ブラマンジュ、落としたから崩れちゃったわよきっと、と。

人とすれ違わないように、雅を壁際に押しやった。



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