飛ばない蝶は、花束の中に
不機嫌そうな顔をしたお兄ちゃんは。
やや俯いた、髭の彼を従えて、帰宅した。
小さな、赤いリボンの掛かったギフトボックスを1つ持って。
出迎えるのが間に合わなかった雅が慌てて廊下に出るのを、手で制したお兄ちゃんは。
そばにいた私の髪をくしゃくしゃと撫でると、足早に。
前を通り過ぎざまに雅の頭も撫で、まっすぐにリビングへと入る。
私と雅は。
やっぱり叱られるつもりでいたもんだから。
少し離れた場所に立ったまま、互いに不安げに視線を合わせた。
小さく首を傾げた雅が、唇に指を当てる。
「…………落ち着かれたようですね」
控えめに笑む、髭の彼は、ポケットから、ひとつ欠けただけの蜂蜜レモンののど飴を、雅に握らせた。