飛ばない蝶は、花束の中に
“タカノ”は、すぐそばの椅子に座って、私の手元を無遠慮に覗き込む。
細長い、白い箱。
その蓋を、そっと持ち上げた。
「ああ、似合いそうだ」
私より先に感想を述べた“タカノ”は。
それどころではない様子の、まだ何か言いたいらしい髭の彼が作る緊迫感を、あっさりと無視した。
「青い……蝶?」
恐る恐る指でつまみ上げたそれは、銀色で。
透き通った青い、蝶の。
「髪、結える?」
触っていいなら、やってあげるけど? と、“タカノ”は意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「お兄ちゃん…これ、私の?」
「…いらねぇか?」
やだ、いるに決まってる。
どうしよう。嬉しい。
嬉しすぎて、髭の彼がついたため息なんか、聞こえないくらい!
「お兄ちゃんが、選んでくれたの?」
「ちょうど目に付いただけだけどな」
嬉しい。
嬉しい。
お兄ちゃんが、私に似合いそうだ、と。
気にしてくれた事が、すごく。
嬉しい!