飛ばない蝶は、花束の中に
「宇田川さん、さっきはありがとうございました」
雅は、両手で運んできたトレイをテーブルの端に置くと、先にお兄ちゃんの前にカップを置いた。
「いえ、ご無事で何よりです」
ちらりと、咎めるように私を見るかと思った彼の目は、こちらを見ないまま。
敢えて私を見ない気なんだ、と思ったのは、私が。
青い蝶を手に取ったとき。
「……空き室は…すぐにご用意できます」
「………………」
がたんっ、と音を立てて立ち上がった“タカノ”が、すごい力で私を引き寄せた。
取り落としそうになった青い蝶を握り締め、訳も分からないまま“タカノ”を睨んだけれど。
そのまま腕を伸ばして雅をも引き寄せた“タカノ”は。
「……そんなに…気にいらねぇなら…当分来んじゃねぇ!!!」
雷の落ちるような、お兄ちゃんの怒声から護るように、私たちを2人とも、リビングから投げ出した。