飛ばない蝶は、花束の中に
あいつは!
俺の兄妹だ!
てめぇは俺に!
この俺に!
頼って来た妹を追い出すような真似をさせる気か!!
“タカノ”が後ろ手に閉めた、リビングのドア。
そのガラスが震えそうなほどの、お兄ちゃんの、声。
「おいで」
“タカノ”が抱えるように、私を抱き起こした。
私はなすがまま、うしろのリビングが気になって気になって仕方なかったけれど。
本気でこの場から引き離そうとする“タカノ”の力の強さに為すすべもなく、引きずられるままに、その場を後にした。
“タカノ”の長めの黒い髪が。
黒い、目が。
長い睫毛が。
いつもの、小馬鹿にするような色ではなく、必死な色を浮かべていることが、妙に怖かった。