飛ばない蝶は、花束の中に
「……ちょっ…と!も…放してよ!」
押し込められるように連れてこられた、雅の部屋で。
はたと気付けば、私は“タカノ”の胸に抱えられたまま。
お兄ちゃんの怒声は聞いちゃったし、髭の彼が私を遠ざけたがっていることも、ハッキリした、あと。
「………ああ、ごめん」
あっさりと、さらりと謝って手を離した“タカノ”を軽く押しやる。
反対の手に居たはずの雅の姿が、なかった。
ドアは閉まっているし、部屋には“タカノ”と、2人だけだと気付いた私は、急に上がってしまった心拍数に、大きく息を吸い込んだ。
「…………雅は?」
「あれ!?」
あれ、…じゃないわよ。
キョロキョロしたって、部屋狭いんだから……
「……落としたかな…」
おかしいなぁ、とばかりに手を見つめた“タカノ”の顔が、妙に真剣で。
私は、消しゴムじゃないんだから…、と。
小さく、呟いた。