飛ばない蝶は、花束の中に


「……ちょっと見てくる」


ぎゅ、と見つめていた右手を握り締め、“タカノ”は再びドアを開けた。



「失くすとかマジないわぁ…」


独り言のように呟いた“タカノ”の後ろ姿を眺め、私は開いたドアから、もう怒鳴っていないのかも知れないお兄ちゃんの、声を探した。




嬉しい。

私を遠ざけたがっていたのが、お兄ちゃんじゃなかった、って事は。



でも。

あんな、険悪になるほどの事を、私、しちゃった?


私の手の中に青い、蝶。
簪のような、髪飾り。

どうやって着ければいいのかしら。
どうやって挿せば、落ちない?



すぐに戻って来た“タカノ”は。

雅を連れてはいなかった。



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