飛ばない蝶は、花束の中に
「…雅はどうしたのよ」
「待ってて、ってさ」
あーあ、と心底うんざりしたように“タカノ”は、今は私の寝ている雅のベッドに、倒れ込んだ。
「ちょっとやだ、寝ないでよ」
「なんで」
「なんでじゃないわよ!」
「あのさぁ」
私の抗議をまるで無視したわけでもないのか“タカノ”は、ベッドの足元に重ねられた、雅の布団部分へ頭を乗せると、私を真っ直ぐに、見た。
「……宇田川さんはさ、凱司が大切でたまらないだけだから」
深雪ちゃんが嫌いだとか、そういうんじゃ、ないよ。
あのひと、普段は冷静で有能な癖に凱司の事になると目の色かわるから。
でも今のは…ちょっとしつこかったね、と苦笑する“タカノ”を、まじまじと見つめた。
「……雅を心配してるん、じゃ…なく?」
髭の彼が心配して、大事にしてるのは雅で、私を遠ざけたがるのは。
私が、その大切な雅を連れまわして、具合悪くさせたから、じゃないの?
“タカノ”の目が。
ふと、楽しむような、哀れむような。
不思議な色を、浮かべた。