飛ばない蝶は、花束の中に
膝を付いて頭を下げる大人を、始めて見た。
それも、今いる中で一番年嵩な、男の人なのに。
お兄ちゃんは確かに、たくさんの人の上に立っていた時期があったけれど。
私が引っ越す頃には、この髭の彼がそばにいただけだ。
苦々しい顔で、お兄ちゃんの隣に立っていた雅は。
“タカノ”に連れられてリビングに来た私に、渋々だろうとは思うけれど頭を下げて、はっきりとした謝罪を述べるのを聞き届けると。
耐えられない、とばかりに顔をくしゃりと歪め、彼に駆け寄った。
「今後一切、干渉不要だ」
お兄ちゃんの怒りは静かなものになってはいたけれど、その尊大な目つきは、ひどく苛ついていて。
雅が何もいわずに、彼の頭を胸に抱くのを冷たく見やると、深雪、と。
私を呼んだ。