飛ばない蝶は、花束の中に
お兄ちゃんの部屋。
くゆる煙の後をついて、来た。
「悪かったな、嫌な思いさせて」
ドアを閉めた、薄暗い部屋は、人の居ないときでも空調がきいているのか、リビングよりも涼しい。
「ううん」
お兄ちゃんは、ベッドサイドに置いた灰皿で煙草を押し消すと、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
クローゼットを開けて、ちらりと見えた中は、散らかってなどいなくて。
黒と銀とで埋まっているように、見えた。
背中に薄墨色の、蛇の胴体。
頭の部分は、手首に。
引き締まった背中から視線が離せない私を気にすることなく、新しいシャツを一枚手に、こちらを向いた。
胸に、髑髏。
私は。
お兄ちゃんが好きだ。
大きくて綺麗で。
誰よりも、私を愛してくれて。