飛ばない蝶は、花束の中に
「暗いな」
リモコンで光量の調節をするのは、リビングと同じ。
ベッドに投げ出されたままのそれを拾って、明るくしようとしたお兄ちゃんの手を、止めた。
「いいよ、暗くない」
「ああ?暗いだろうが」
別にいいのに。
ちょっと薄暗い方が、なんとなくいいのに。
「深雪。お前の母親、再婚の話があるらしいじゃねぇか?」
音もなく明るくなった部屋で、お兄ちゃんのタトゥーは鮮やかに浮き上がる。
「………え?」
なん、で知ってるの…?
「…だからドイツに帰るっていう話…なんだろ?」
私の鼓動は、一度大きく耳元で鳴ったあと、静かになった。
「……ママに、聞いたの?」
じっと私を見つめたお兄ちゃんは、ベッドに腰掛けて。
そうだとも、違うとも答えないまま、再び照明を少し、暗くした。