飛ばない蝶は、花束の中に
「…お兄ちゃんの…ママも…別の人と結婚したって聞いたわ」
ああ、そうだな、と。
お兄ちゃんは柔らかく、微笑んだ。
…龍司の奴を、よっぽど好きだったんだか…わかんねぇけどな、と。
私から視線を外したお兄ちゃんは。
「俺の母親も、結婚するとき、再婚って言葉を使った」
初婚な癖にな。
結婚式をシチリアでやって。
俺が、花嫁な母親の、手を引いたんだ。
ハネムーンから2人が帰る頃には、俺は宇田川に連れられて、龍司んとこだった。
初めて聞く、話。
お兄ちゃんのママと、私のママは姉妹で。
お兄ちゃんのママが“再婚”する時、私のママはどうしてたんだろう。
私は産まれていない。
「俺らの親父は…どうしようもない男だな」
くく、と笑うお兄ちゃんの気持ちを、解らなくはない。
私だって、大きくなった今、純粋に、手放しに。
パパが好きだとは、言えないけれど。
憎めも、しないんだから。