飛ばない蝶は、花束の中に


いいか、と。

お兄ちゃんは、ささくれに引っかかるような私の感情を撫でるように。
隣に座った私に向き直った。


上半身を覆う刺青は、和彫りのそれではない。

肩から流れるように左腕に巻き付く蛇は、その中でも飛び抜けて綺麗で。

蛇そのものは嫌いな私だけれども、なんだか特別な力が宿っているような、気がした。




「俺とお前は、兄妹に変わりはない。どうしようもない男を父に持った、三人兄妹」


まだ増える可能性は…無くもないけどな、とお兄ちゃんは片眉を上げて笑うと、蛇の巻き付く腕で、私を控えめに、引き寄せた。



「大丈夫だ。いつでもそばに居られる訳じゃないが…深雪が困った時は、必ず俺がいる」



だから。
母親のそばにいろ。



居られるうちは。

居ても、いいうちは。




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