飛ばない蝶は、花束の中に


じゃあ、“タカノ”がいなかったら。

いなくなったら…?



……なんて、訊けない。



ぎゅ、と。
お兄ちゃんの背中に腕を回した。


離れたく、ない。
誰にも、あげたくない。


ふと、雅はお兄ちゃんを好きなのに、って、頭をよぎった。



好きなのに。

あの子は、お兄ちゃんを…好きなのに。





「ねぇ…お兄ちゃん」


腕は絡みつけたまま、顔を上げた。


「雅、“タカノ”と別れさせてあげて」

「…………………」



お兄ちゃんはあまり表情を変えなかったけれど、小さく息をつくと、私の体を押し戻した。




「…この前もそんなような事、言ってたな」

どうしてそんなに、気になるんだ?
俺には、引き離す理由が見当たらねぇが、と。


立ち上がったお兄ちゃんは、ようやくシャツの、袖を通した。




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