飛ばない蝶は、花束の中に
「胸んとこ、怪我したんじゃないか、っていつもの如く」
“タカノ”は、ガイが灰皿なんか投げるから、と笑うけど。
お兄ちゃんも、そんなもんで怪我するかよ、と笑うけど。
「脱がそうとしないで下さい!」
「……だって」
「だって、は禁止しました!!」
「………いぃもん」
赤味の差した頬を、やや膨らませて、ぷいっとばかりにそっぽを向いた雅は。
「宇田川さんの…むっつりえっち!」
気にしすぎなんですっ。
短く言い切り、逃げるように立ち上がると、絶句した髭の彼に洋服用のブラシを押し付けた。
「…む…っ…つり、えっち…」
酷く傷ついたのかも知れない髭の彼の顔は、申し訳ないくらい可笑しくて。
私は一生忘れられないような、そのフレーズを、思わず。
繰り返した。