飛ばない蝶は、花束の中に
送ってもらうなんて。
そんなことして貰う訳には行かない、と、本気で首を横に振った雅に、私は首を振り返した。
だって私、お兄ちゃんに頼まれたもの。
“雅がひとりで歩けば、ああなる”
なったら保護者の俺か、宇田川が迎えに行かなきゃならない。
だから深雪、雅を見ててくれ、って。
お兄ちゃんに、そう頼まれたもの。
「私も少し、ひとりで買い物したりしたいし」
ついでよ、と。
半ば無理に丸め込んで、まだ納得いかない顔をする雅の、バッグを手に引っ掛けた。
「早く行った方がいいんじゃないの?」
少し、早めに歩こう。
私は雅を、お兄ちゃんや、髭のむっつりな彼のように抱え上げる事は出来ないから。
手を引いて。
他人の匂いや体温を、感じないで済むように。