飛ばない蝶は、花束の中に


途中、一度だけ。
待って待って、早いよぅ、って。

笑うような、本気なような抗議の声を上げた雅が、息を整えるために立ち止まっただけで。

本当に短時間で、駅を出た。



鍵を3つ渡されて。

これが、外のガラス戸の上、こっちが下、それからこれは、玄関ね、と。

絶対、落としたりしないでね、気をつけて帰ってね、帰ったら全部の鍵を閉めて、電話は出ないでね、って。



懇切丁寧、というか。

多分、自分が言われているのかも知れない注意を、さも心配そうに、された。



私からすれば、雅の方が、遥かに危なっかしい。

鍵を無くしたりするような、危なっかしさではなく。


好きですよ?
凱司さんも、と。

宇田川さんも、友典さんも。
深雪ちゃんも。

でも、鷹野さんは特別ですから、と照れるならばともかく。



ひどく申し訳なさげに目を伏せながら言う、危なっかしさ。




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