飛ばない蝶は、花束の中に
店まであと、20mの位置まで、送り届けた。
すみません、ありがとう、ごめんなさい、と、謝罪の方が多かった雅が、ちらりと。
“タカノ”の職場に目をやった。
炭色の建物から、ちょうど出てきた従業員らしき男と、客らしき、女。
眺めるでもなく私も見やって、ちょっとした違和感に、眉をひそめた。
「じゃあ、行ってきます。ちゃんと連絡したから…帰りは鷹野さんと帰ります」
「うん、私も適当に帰るから」
意識は。
到底、従業員と客、の関係内とは思えない動きをした、ふたりに向いたまま。
「…………」
あれは、“タカノ”ではないけれど。
“タカノ”は、美容師じゃなかったっけ?
“タカノ”の働く店は。
雅の視界に入るだろう、彼の職場は。
客の髪を撫で、顔を覗き込みながら笑むような、そんな…?