飛ばない蝶は、花束の中に
道を、横断した。
間近で、確認したい。
美容室独特の、匂いがする。
中の見えない建物。
炭色の、壁。
さっきの女性とすれ違ったけれど、確かに髪は綺麗に整えられていて。
つい今しがた、頬を染めんばかりに笑顔を浮かべていた事なんか嘘のように、キビキビと歩いていた。
美容室って、あんなことする?
美容師って、ホストじゃないわよね?
建物のそばまで寄れば、確かに歩道から丸見え、って訳ではないみたいだけれど、道の向こう…雅のいる店からは、絶対に見えるはずだ。
いくら、意に添わない彼氏だったとしても。
気にならないわけは無い。
この前来たときにカフェの入り口ですれ違った、あのふたり。
雅は、お得意様、と言ったっけ?
この美容室の従業員だと、言ったっけ?
わざわざ雅の目の前で。
“タカノ”と客と、も。
…甘く囁き合う訳!?