飛ばない蝶は、花束の中に
「…約束、したわけじゃないけど、駄目なの?」
何様なのよ。
「……大声で呼んでもいいんだけど?」
下から、挑むように。
きっと、この静かな空間を突き破るように怒鳴ったら、困るわよね?
口を噤んで、私を観察していた男は、小さく肩をすくめると、馴れ馴れしく私の肩を抱いた。
「少し、お待ち下さい。鷹野は接客中です」
「触らないで」
とても綺麗な男なんだけれども、ちっともときめかない。
こんな男にちやほやされて喜ぶなんて、さっきの女の人は、どんな感覚してるんだろう。
お兄ちゃんのほうが、断然カッコいいし、セクシーだわ。
通された、何番目かの空間は、やっぱり黒と銀色で。
さほど大きくはない、アールヌーボー調の鏡が、綺麗だった。