飛ばない蝶は、花束の中に



「お待たせ」



目の前に置かれたティーカップを、睨むように見つめたまま、それを運んできた男を無視した、まま。

無理言って、すみません。
と、おざなりに謝罪をしたきり口を噤んだ私に、そばにいない方が良いと判断したのか、男は。

ティーカップと小さなお菓子を置くとすぐに、傍から離れて消えた。



この、個装されていないお菓子は、もしかしたら雅が道の向こうで焼いたものかも知れない、などと、思っていた、頃。





「何か、あったの?」


滑り込むように現れた“タカノ”が、小さなテーブルを挟んで、向かいに座った。



白いシャツに、黒いネクタイ。

ただの黒じゃなくて、銀の糸で刺繍がしてある。



髪を掻き上げる仕草が、うちで見るよりも遥かに。

……遥かに、セクシーで。




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