飛ばない蝶は、花束の中に



「……………なに、そんな事言うためにわざわざ来たの?」



“タカノ”の空気が、一変して。
私はしまった、と唇を閉じたけれど。




「……せっかく来たんだ、俺がどんな風に仕事してるか、見て行きなよ」

持ってるでしょ、青い蝶の。


健気だよねぇ…絶対に報われない恋してさ。

今度は…ピュアな振りして友情ごっこ?





「素直すぎて、反吐が出る」




“タカノ”の、私に向ける顔は。
どこか仮面をかぶったような。

どこかで演技をしているような、そんなちぐはぐさがあるけれど。




優しくなったり。
昔のように冷たい目をしたり。



“タカノ”。

あんたは、どの顔が、ほんとなの?



どれも嘘なの?
どれも本当なの?




騒ぎ立てたら、あんたが職場で大騒ぎして大迷惑してる、って、愛しい“お兄ちゃん”に電話するよ、なんて。


私は。

呑み込まれそうな“タカノ”の目の仄暗さに、どこか雅と同じ色を見た気が、した。




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