飛ばない蝶は、花束の中に
「……もう、やめて」
幾度目かの唇の接近に、耐えられなかった。
気丈に背筋を伸ばして、鏡だけを睨みつけていたけれど。
馴れ馴れしい、と言うほどでもなかった“タカノ”の指と体の動きに。
不覚にも、気持ち悪さから来るものではない鳥肌が、立った。
雅ちゃんが好きなのは、俺だよ、と。
恋に恋して、自分の兄貴に色目使うようなガキには、わかんないと思うけどね、と。
囁かれる言葉は、とっくに“タカノ”に呑まれていた私の、反論を許さない。
ただ、雅が道の向こうにいるのに、どうして平気で私に唇を寄せるんだろう、とか。
私はどうして、いつもみたいに“タカノ”をひっぱたけないんだろう、とか。
指先で唇をなぞられて。
いつの間にか緊張しきった私をからかうように、“タカノ”は。
触れるだけのキスを、した。