飛ばない蝶は、花束の中に
「…深雪?」
私がソファーにうずくまってから、ほんの一時間程で帰宅したお兄ちゃんは。
なかなか吹っ切れないまま、立ち上がる気力も無くした私のそばに、腰を下ろした。
「具合でも悪いのか?」
「………ううん」
「なら、どうした」
お兄ちゃんは、その灰青の目を眇めて、私を覗き込む。
色合いは、冷たい。
だけど、今、私だけを映すその目は温かくて。
妹だから。
私が、妹だから、なんだとは思うけど。
「…………」
私は泣くのを我慢して、お兄ちゃんに両腕を、伸ばした。
「……何か、怖かったのか?」
お兄ちゃんは躊躇いなく私を引き寄せて、私が小さな子のままであるかのように、抱きつくままに、腕を回してくれる。
視界いっぱいの、お兄ちゃんの胸に、頬を擦り付けて。
ああ、私、“タカノ”が怖かったのか…と、妙に納得、した。