飛ばない蝶は、花束の中に
「…お兄ちゃん」
ちょっとでいい。
少しで、いいから。
じっとしてて。
私は顔を上げて。
お兄ちゃんの足の間に、体を収めた。
正面から、首にしがみつく。
「…私、お兄ちゃんが好きよ。絶対“タカノ”じゃない」
「……鷹野?」
「違う!」
違う、絶対。
単に、初めてのキスに動揺しただけだわ。
私、お兄ちゃんが好きよ。
誰が何を言ったって、お兄ちゃん本人が受け入れてくれなくたって。
お兄ちゃんが悪いのよ。
雅みたいな子と、一緒に暮らしてるなんて。
“タカノ”みたいな奴を信用してるなんて。
私とは一度だって暮らしたことないのに!
押し倒すように、体重をかければ、いともあっさりと。
仰向けに倒れたお兄ちゃんの上に乗ったまま、私は。
ちっとも動揺してくれない、その目に苛ついて、自分から、唇を合わせた。