飛ばない蝶は、花束の中に
お兄ちゃんは、目も閉じなかった。
私も、そう。
なんだか違う、何か違う、と思いながら。
どうしたらいいか判らないまま、ただ唇を合わせる事だけを、繰り返した。
「…鷹野は……やめとけよ?」
「………ちがっ…」
「アレは、雅にしか扱えないぞ。泣かされるだけだ」
「違うったら!!」
お兄ちゃんの胸に両手をついて、体を離した。
どうしてそんな勘違いができるの!?
こんなに何度も、お兄ちゃんが好きだって言ってるのに!
お兄ちゃんの腕は、私を放してはいなかった。
私の腰を抱いたまま起き上がって、じっと、顔を見下ろした。
「…深雪。一旦、ドイツに行け。少し、外を見ろ」
昔のお前も、俺しか見てなかった。
引っ越して、これで少しは外を見るかと思ったら、ちっとも見なかったんだな?
俺以外の世界を、ちゃんと飛べ。
…飛べなかった時は、戻って来ていいから。