飛ばない蝶は、花束の中に


「…雅には…応えたくせに」


私は、お兄ちゃんのシャツを握って、真っ直ぐに睨み上げた。


動揺しないのは、ここも同じ。

冷静に私を見下ろすお兄ちゃんは、ただ僅かに、眉を寄せただけ。




「私、雅より魅力ないの?」


これでも、すごく頑張ったのに。
お兄ちゃんに嫌がられないように、綺麗になろうと、頑張ったのに!

どうして、雅には応えて、私は駄目なの?


私は本気で、お兄ちゃんに抱いてほしいと…願ってるのに!





「………深雪…、真面目に…本気で…言ってんのか?」



ふと、お兄ちゃんの目に苦い色が、浮かんだ。



「……真面目に、言ってるわ」


もう、恥ずかしいとか、はしたないとか、考えなかった。


雅は、お兄ちゃんに受け入れて貰えたから、今、文句も言わずに“タカノ”のそばにいるんでしょう?

だったら私も、おとなしくドイツに行ってもいい。



だから。

ねぇ、だから。




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