飛ばない蝶は、花束の中に
私は、布団から慌てて抜け出して、平静を装おうと、背筋を伸ばした。
鍵の無いドアは、やや遠慮がちに、それでも私の意志など関係なく、開く。
黒いカッターシャツを羽織った、細身の、“タカノ”。
昼間見た時と、雰囲気が違う。
意地の悪い目つきは、影を潜めて、いかにも優しげに。
「……寒っ」
後ろ手にドアを閉めた“タカノ”は、睨みつけるような私の視線をものともせずに、ベッドの端に、腰掛けた。
私の居る、雅のベッド、に。
「…………なによ」
「…………別に?」
ふと浮かんだ、わざとらしい笑みに、私の体温が上がる。
そういえば、キスを、した。
この、顔ばかり綺麗な、男と。
「…今日は…雅ちゃん送ってきてくれて、ありがとね」
何を言いに来たのかと身構えた私に、“タカノ”は。
キスの事なんか、全く気にもしていないかのように、私の目をまっすぐに、覗き込んだ。