飛ばない蝶は、花束の中に
張り詰めた“タカノ”の空気。
射殺すような目が、私を怯ませるけど。
離してなんか、やらない。
私に、買えと言ったのは“タカノ”だわ。
“タカノ”は、どれだけ口で、雅を好きだと言ったって、所詮はそんな程度の男なのよ!
好きな女の部屋にいる、他の女に。
平気でそんな事を持ちかける、最低の男だわ!
固く握りしめた“タカノ”の手が、ふと私の手を握り返した気がして。
張り詰めた空気が、急に冷たく、肌に突き刺さった。
息を詰めて、“タカノ”が見つめているのは、なに?
不自然なほどに、何も言わなかったお兄ちゃんが、大きく上半身をかがめて。
雅の耳元で。
お前は、どうしたい?
と。
囁くのが、見えた。