飛ばない蝶は、花束の中に


「雅ちゃ……」

「お前は黙ってろ」


小さく呼びかけた“タカノ”を、お兄ちゃんは睨み付けて、口を噤ませる。


私の手の中で、みるみる体温を失う“タカノ”の指は。
私を馬鹿にしたように笑う“タカノ”のそれでもなく。

私にキスをしたそれでもなく。


ドアから動かないまま、固く小さく頭を抱え、きつく目を閉じた雅の言葉ひとつで、砕け散ってしまいそうな、脆いものに、思えた。




「……雅、息をしろ」

「………っ…」


頬を寄せて、お兄ちゃんは。
“タカノ”を睨みつける。

“タカノ”を掴む、私ごと。



私は。

嗜虐心と、恐怖と、後悔と。
じわじわと湧き上がる冷静さとに。


指の関節ひとつ、動かせないまま。


あとひとつでも間違えたら、奈落の底に墜ちるのがわかっているかのような、切羽詰まった緊張感に、吐き気すら、もよおした。



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