飛ばない蝶は、花束の中に
真っ白に緊張した空気は、ほんの数秒だったかも知れない。
“タカノ”の手が、ぴくりとも動かない事と。
お兄ちゃんの目が、その色合いと同じくらい冷たく、私たちを見つめていることが。
みるみる私の冷静さを呼び起こした。
今、私は。
“タカノ”と同列。
こんな程度の男、と馬鹿にした“タカノ”と、何ひとつ変わらない。
いや、もっと酷いことをしているのかも知れない。
穏やかに。
常に穏やかに私を気遣う雅を、ただ傷つけようと、した。
私が、雅には責のない事で、勝手に恨んで。妬いて。
私はお兄ちゃんを好き、と言っているのに、“タカノ”を買おうとした。
「…ゆっくり、吸って、吐け」
囁くようなお兄ちゃんの声。
微かに頷いて、小刻みに震える呼吸を、繰り返した雅。
私は。
…私は。