飛ばない蝶は、花束の中に
「………あたし、は」
声は、最初の発音を震わせて。
顔を上げた雅が、背筋を伸ばしたことで、クリアに。
真っ直ぐに“タカノ”を見つめた雅の目が、ひどく揺れていて。
結局は恋愛経験の浅い、私にも、…解ってしまった。
「鷹野さん」
「………」
“タカノ”の指が、私の手の中で、強張る。
雅は。
「……あたし、嫌です」
支えるように、肩に触れていたお兄ちゃんの手が僅かに押したのか、雅は一歩踏み出し、そのまま“タカノ”のそばに、歩み寄った。
「…いやです」
小さい声ながら、はっきりとそう発音した雅の細い指が。
“タカノ”の手を掴む私の手へと、伸びた。
雅は。
「深雪ちゃんに…何したんですか?」
何かしたんじゃなければ、凱司さんが、あんな風にわざと……1番痛い釘を打ち込まなきゃいけない事になんか、ならないですよね?
雅は。
本当に。
あてがわれた訳じゃ、なくて…。
“タカノ”を、好きなんだ。