飛ばない蝶は、花束の中に
「…でも、……嫌」
掠れる声は、小さいけれど。
ドアにもたれて、じっと成り行きを見つめるお兄ちゃんにも、聞こえたと、思う。
「……鷹野さんが…深雪ちゃん…と…」
……嫌。
………嫌です。
…いやなの。
あたし、鷹野さんと一緒にいたい。
離れるの、嫌。
“タカノ”は、まるで返事をしない。
しないのか、出来ないのかは解らないけれど、とにかく。
一切の声を出さずに、ただ。
指が白くなるほどにきつく、雅の頭を、抱えていた。
私にしたら、嫌だという雅の訴えは、ごく当たり前のこと。
こんな状況を作った“タカノ”を馬鹿だと思ったし、追い討ちをかけた自分も、馬鹿だと、後悔した。
だけど、じっと見つめていた、お兄ちゃんは。
大きく息を吐き出すと、よし、と。
唇の端を上げた。