飛ばない蝶は、花束の中に
……え?
どうして、お兄ちゃん…?
よし、って、どういう事?
「………良かっ……た」
不意に、“タカノ”の緊張が解けて、崩れるように、雅を押し倒した。
「…なんに、も…良くあり…ません!」
抱え込まれた腕の下から、雅の、苦しげな抗議の声が聞こえたけれど、私は腕を引かれて、お兄ちゃんを振り仰いだ。
わけが、解らない。
「深雪、お前……男買うには10年早ぇだろ」
緊迫した空気は終わったとばかりに和やかに、はっきりと苦笑を浮かべたお兄ちゃんの視線は、私の視線を泳がせる。
そう、よね…。
私、勢いだけで…とんでもないこと叫んで、雅を意地悪く掻き乱した、…のよね?
「言っとくがな……お前、小学校上がるまでに、何度俺にキスをせがんだと思ってるんだ?」
なんか食いながら、何度されたか。
口を片方だけ歪めて笑うお兄ちゃんは、いくらなんでも圧死しそうな雅を助けるべく。
“タカノ”の襟首を、掴み上げた。