飛ばない蝶は、花束の中に


「…深雪ちゃんには、ちょっとキスしただけじゃん。道を踏み外す前に」

代償必要?



と、やや苦々しい顔をした“タカノ”に、じわりと腹が立った。

あんた、私の唇をなんだと思ってるのよ。



「雅ちゃんは泣いてないし。ちゃんとヤキモチ妬いてくれたし。ちゃんと…言えたし」


大進歩して、ますます可愛いのに、なんで凱に貸さなきゃならないのさ。


なんて。

なんて勝手な、男。


やっぱり、雅の気持ちなんか、全然わかってない。


ほら、雅だって。


…………やだ、すごい泣きそうじゃないのよ…。




私が、お兄ちゃんの左腕に。
雅が、右腕に。

それぞれ抱えられたまま、“タカノ”に視線をやる。





「………サイッテー」

「……キス…したんですか」



私はお兄ちゃんに抱き付く。

雅は無意識かもしれないけれど、やっぱりお兄ちゃんに、小さく抱き付くように、シャツを握った。




< 264 / 328 >

この作品をシェア

pagetop