飛ばない蝶は、花束の中に
「…深雪ちゃんには、ちょっとキスしただけじゃん。道を踏み外す前に」
代償必要?
と、やや苦々しい顔をした“タカノ”に、じわりと腹が立った。
あんた、私の唇をなんだと思ってるのよ。
「雅ちゃんは泣いてないし。ちゃんとヤキモチ妬いてくれたし。ちゃんと…言えたし」
大進歩して、ますます可愛いのに、なんで凱に貸さなきゃならないのさ。
なんて。
なんて勝手な、男。
やっぱり、雅の気持ちなんか、全然わかってない。
ほら、雅だって。
…………やだ、すごい泣きそうじゃないのよ…。
私が、お兄ちゃんの左腕に。
雅が、右腕に。
それぞれ抱えられたまま、“タカノ”に視線をやる。
「………サイッテー」
「……キス…したんですか」
私はお兄ちゃんに抱き付く。
雅は無意識かもしれないけれど、やっぱりお兄ちゃんに、小さく抱き付くように、シャツを握った。