飛ばない蝶は、花束の中に
「雅、どうしたい?」
「………………」
「“ちょっとキスしただけ”だとよ?」
「………………」
お兄ちゃんの。
畳み掛けるような、声。
雅の視線は、床に落ちた。
慌てたように“タカノ”は立ち上がるけど、私は。
雅の指が、お兄ちゃんのシャツを握りなおした事に、なんとなく。
安心した。
…おかしいよね。
雅がお兄ちゃんに縋りそうになっているのに、安心しちゃうなんて。
「…………雅ちゃ…」
ああ、ほんと情けない、顔。
せっかく、顔立ちだけは綺麗なのに。
こんな男の、どこが良いの?
別れちゃえばいいのに。
こんな。
結局はお兄ちゃんに逆らえないような、男なんて。
お兄ちゃんがその気になれば、いつだって別れさせられるんだから。
「いっそ…別れちゃいなさいよ」
ぽつりと吐き出した私の声に、動じなかったのは、お兄ちゃんだけだった。