飛ばない蝶は、花束の中に


「…深雪ちゃん…紅茶甘く、したから………」

だから一緒に、座っ………



途切れ途切れに言いかけて、思い直したのか、雅は口をつぐむと。
ソーサーに乗せたティーカップを2つ、ソファーまで運んできた。


生々しい“タカノ”の言い訳に、あまり反応しなかった雅だけれども。

私をちょくちょく気にし、今も。
カップを手渡すと、私の足元に、ぺたりと座り込んだ。




「……あの…」


ようやく、何かが恥ずかしくなったのか、雅は頬を赤らめて、私を見上げる。





「………………」

「……どれよ」



間違えた。
何よ。


………どれが恥ずかしくなったのか、解らないくらいには、恥ずかしい事がありすぎなんだもの。



「……な…んでもなぃ…」

「…………ああ、そう」



私は。

私が“タカノ”を買おうとした事とか。

“タカノ”が売ろうとした事とか。

キスされた事とか。



なんだか、どうでも良いような、そんな。

ひどくめんどくさい無気力感に、ため息をついた。




もしかしたらお兄ちゃんも、こんな感じでため息を吐いているのかも、知れない。





< 275 / 328 >

この作品をシェア

pagetop