飛ばない蝶は、花束の中に


「だから別に無理強いしてないって!」



……まだ言ってる。

“タカノ”って、あんな顔もできるんだ?
あんな必死に、喋れるんだ?



「雅あんた……アレ、何とかしてきなさいよ。私は大丈夫だから」


雅は、きっと。
私が“タカノ”にキスをされたことを、気にしてる。

本当は、“タカノ”が“他の子にした”ということが気になるくせに。


私が、深く傷付いているかのように、私ばかりを気にする。



確かに、傷つかなかった訳ではないけれど。

だけど。

私は。

雅が傷つけばいい、と思ったのに。


“タカノ”が私に手を出して、私からお兄ちゃんを取った雅が泣けばいい、と。


…思ったのに。




「いい加減、黙らせないと…恥ずかしすぎるわよ、アレ」


あんなに、必死。

お兄ちゃんが、いろんな代償に雅を一晩借りるとか…言うから。



それに対する嫉妬心が、思いのほか沸き上がらなかった事に、私は。


“タカノ”の弁解を、聞き流し、返事もしないお兄ちゃんの姿を、見つめた。




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