飛ばない蝶は、花束の中に



「…………あの」


ようやく“タカノ”に向き直った雅は、唇を噛んで、目を逸らした。



「……あたし…」



逸らした視線は、真っ直ぐに私を見ていて。

雅は何も言い出せないまま。


“タカノ”も、指を伸ばしかけたまま、雅が何を言い出すのかを恐れるように、震えるような息を、大きく吸った。





「……嫌だけど…嫌、です」

「…………え?」



主語のない言葉をようやく吐き出した雅は、私を視界から追いやるようにぎゅ、と目を閉じてから。

一瞬、意図をはかりかねた“タカノ”の手を逃れるように身を翻すと。


お兄ちゃんの腕に、しがみつくように張り付いた。




「凱司さん、あたし…嫌なんだけど……嫌なんです!」


苦しい、と呟いた雅に。



お兄ちゃんの動きは、早かった。




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