飛ばない蝶は、花束の中に
「今、コーヒー淹れますから」
だから、上がってください、と呟くように言った“友典”を、見つめた。
彼もまた、父親同様、雅を大切に想う、ひとなのだろう。
年齢は、1つ上らしいけれど、見た感じは、もう少し上に見える。
「あー…いい。宇田川いねぇ時には上がらない事にしてる」
連絡はしてあるから、悪いが頼むな、と、お兄ちゃんは、私に。
車に乗るように、促した。
雅は、やや俯いて。
結局私と目が合わないまま。
私達の車が見えなくなるまで見送るつもりなのか、堅く頭を下げた姿勢を崩さない“友典”の隣に、ただ立ち尽くしたままだった。
「……お兄ちゃん」
「なんだ」
「2人にして、いいの?」
だって“友典”は、男の子。
雅は女の子。
大丈夫、なの?
「……友典に、そんな魔が差すような甘さはねぇよ」
他の事は、そこそこ甘っちょろいけどな、と。
お兄ちゃんは、何を思い出したのか、笑みを浮かべて嘆息した。